そんなある日の物語 

 〜エイフマンの休日〜




 その日は休日で、レイフ・エイフマンは自宅でのんびりと物思いに耽っていた。晴れた日の空の下で思うことは、取り囲む若き才能たち。
 特に、エイフマンの愛弟子であるビリーと、MSWADのエースパイロットたるグラハムは、ある意味ではエイフマンの息子のような存在だった。
 今よりもっと幼い頃にエイフマンをもう一人の父だと言い放ったビリーと、エイフマンが見いだし掬い上げた若き才能グラハム。穏やかで世間知らずな外見でありながらも若くして天才の名をほしいままにしているビリーが、溢れんばかりの才能と燃えるような向上心を持つグラハムの横にあればユニオンのMSは更なる高みへと飛ぶことができるだろうと確信していた。
 そしてその感覚は日に日に現実味を帯びていき、おそらくはこの愚かな戦いの日々が終わればエイフマンはビリーに全てを譲ろうと、安心して譲っていけるだろうと考えていた。
 けれど、ときに事実は小説よりも奇なるものとなる。
 ――ビリーとグラハムが、恋人同士になったというのだ。
 いったいいつの間にそんなことに、と思いながらも問えずにいたエイフマンの元に、グラハムがビリーを伴ってやってきたのはいつのことだったろうか。
『カタギリは私がいただきます』
 まるで花嫁の父に誓うような言葉に、エイフマンは首を傾げつつも苦笑した。なぜ自分に問うのかと訊けば、あなたがカタギリにとっての第二の父だからだ、と彼は云った。――そして私にとってもあなたは礼を尽くしても尽くしきれない存在です。そんなあなただからこそ、どんな些細なことでも私たちのことを知っていてほしいのです。


 彼らの未来がどこに繋がっているのか、エイフマンには知る由もない。しかし今はただ願いたいと思うのだ。
 愛すべき子どもたちが、この空の下で幸せであるように。