セカイでいちばん大嫌い 




 ああもう!
 君なんか嫌いだ。君なんて嫌いだ。大嫌いだ! どうして僕はこんな奴の我儘を逐一聞いてやっていたんだろう。こんな、我儘で、自分勝手で、自己中心的で、人の気持ちなんて欠片も考えない人間のことを甘やかした、ああそうだよ君を甘やかした僕の責任も少しはあるだなんてことはわかってる! それでも! それでも、だ!

「君はなにをそんなに怒っているんだ」

 ああこの顔だ、この顔。自分だけは正しいですなにもしてません当然って顔をしてるこの顔が許せない。そりゃあ確かに見栄えのする顔をしてるけど、君自身はそんなのに興味はないってそんなことは知っているけど、この顔が自信満々に喋るときの偉そうなあの感じときたら! 自分が云えばなんでも叶うと思っている態度が気に食わない。ああだからわかってるよ、その願いを叶えてやっていたのは僕自身だなんてことは!!

「……カタギリ、わかった。わかったから」

 なにがわかったっていうんだ。君はなにもわかってない。僕がどんなつもりで、どんなことを考えて君の隣にいるか、フラッグを造っているか、全然わかってないじゃないか。
 エイフマン教授たちとフラッグを造るのはそりゃあ楽しかったさ。けれど最初は、フラッグが選ばれたならそれで僕の仕事は終わりだと思ってた。最先端で最強のMSを造ったらそれで満足だったし、軍みたいなところにそれ以上身を置く気なんてなかったから。僕はこれでも非戦論者なんだ。矛盾しているけど、新型の開発をする以上の関係を軍と持つ気はなかった。フラッグをロールアウトしたら、アイリス社の研究所で次の仕事が待っているか、エイフマン教授の研究室に戻って他の研究の続きをするものだと思ってた。なのに、なのに僕は軍に残ったんだ。軍上層部に懇願されたのは確かだけどそれだけが理由じゃない。引き止められるだろうことは最初から予想していたしね。それを振り切れるだけの能力も立場も僕にはあったから。……でも結局、僕は軍に残ったんだ。僕だけが残ってエイフマン教授を見送るなんて思ってもみなかったことが、それでも現実に起こったんだ!

「カタギリ、君は、」

 僕はどうして君なんかと出逢ってしまったんだろう。君に逢わなかったら、きっと今も色々な研究をしていて、エイフマン教授と共同研究とか、新しい実験とか、きっと毎日忙しくてやりがいがあって、僕はずっと楽しくて、……たのしくて。

「……カタギリ?」

 僕がどんな気持ちでここにいて、どうしてずっとここにいるかなんて君にはわからない。わかるはずがないんだ、きみになんか。
 きみは、……そうだよ。
 きみはなにひとつだってわかってない。