直観勝負








 君は誰。
 そう云ったら、君は怯んだように目を見開いたね。






 そのとき、ビリーが口にした言葉は確かに自身がそう思っていたことに変わりなく、偽りの影さえもそこには紛れていなかった。
 ビリーの前に立つ男。ビリーより少しばかり背の低い、けれど細長いだけのビリーとは反対にしっかりとした身体つきで地に足をつけている鮮やかな金の髪を持つ男の名を、ビリーは知っているような気がした。
 いや、知っているに違いない。知らないはずが、なかった。
 けれどそのときのビリーはどうしてか知っているだろうその名を口に出すことができず、口に出そうとも思えず、ただ彼を見下ろして吐き捨てるように言葉を紡ぐことしかできなかった。
「なぜ君のような人間がこんなところにいるんだい」
 疑問を口にしながらも、そこに込められた意味は確かに拒絶だった。お前などがここに来るな、ビリーは確かにそう思いその意を込めた。我ながらひどいものだと感じはしたが、それでも想いのままを吐露する他に、今のビリーにできることはなかったのだ。