君に決めた 




「グラハム、君に決めた!」
「突然どうしたカタギリ」
「ああ、いきなりごめん。来週のハロウィンパーティーで仮装コンテストがあることは君も知っているだろう?」
「ああ」
「それに、技術部代表で出ることになったんだけどね、適任者が見つからなくて」
「確かあのコンテストは二人一組が原則だったな」
「そう、だからパートナーを探していたんだけど、君に決めたよ、グラハム」
「何故?」
「僕はね、グラハム。片方は技術部恒例である魔法使いにしようと考えている」
「……そうか」
「二年前にはエイフマン教授がされて準優勝を勝ち取った栄誉ある仮装でもあることだしね」
「なるほどな」
「その魔法使いは今年は僕がやるとして、もう片方の仮装を誰にやってもらおうか、ずっと悩んでいたんだ」
「それで、私に?」
「そう、君ならきっと似合うよ。僕と君が組めば優勝だって目じゃないさ!」
「そうか。それでその役は――」
「君なら間違いなく最高の魔女になれるよ!」
「…………なに?」
「僕が魔法使いなんてインパクトがないだろう? だったらパートナーは可愛い魔女がいいんじゃないかと思って」
「……つかぬことを訊くがカタギリ。二年前のプロフェッサーのパートナーは誰が務めたのだ?」
「あのときは、僕がフランケンシュタインの仮装をしたんだ」

 なるほど偉大なる魔法使いと人造人間、確かにこの師弟には適役だろう。だがしかし。

「しかし、魔女というからには――」
「大丈夫、君なら素敵な魔女になるよ」

 その微笑みは言葉では言い表せないほどに魅力的で、今がこのような状況でさえなければ唇でも奪っていたというのに。

「……引き受けよう」



 苦々しく返した言葉の返礼は鮮やかなまでの笑みで。
 この笑顔のためならば女装仮装のひとつやふたつ、涙を飲んでこなしてみせようとグラハムは心に誓うのだった。