【ジョシュア→グラビリで学園生活】
(指定型学園生活バトン)




▼指定型学園生活バトン
《指定:グラハム》 『』の中には指定された人物名を入れてください。
あなたは『グラハム』と同じクラスになりました。


 「あなた=ジョシュア」です。
 親の仕事の都合で小学校高学年くらいから全国を転々としてきたジョシュアは、生まれ育った街に数年ぶりに戻ってくることになりました。しかも編入することとなった高校は、幼馴染のビリーが通っている男子校で。ビリーとまた同じ学び舎に通えると思うと自然と気持ちも高揚するジョシュアでしたが、しかし残念なことにビリーとは違うクラスになってしまいました。
 そんなジョシュアの高校生活は、ビリーのいないクラスで始まることとなり――?








1.あなたは『グラハム』と隣の席になりました。どうやって挨拶する?

「初めまして、だな。グラハム・エーカーだ。よろしく、ジョシュア」

 まさか、と思った。けれど確かに、見てみればそれらしき特徴はあるようだ。俺のものよりも明るい色合いの波打つ金の髪、好奇心に満ち溢れた碧の瞳。
 ――こいつが、ビリーの話していたグラハムか。

「お噂はかねがね伺っていますよ、グラハム・エーカー学級委員殿」
「……噂?」
「そのうちわかるでしょうよ、きっと」

 お前などにわかってたまるか、とは思うけれど。



2.『グラハム』が教科書を忘れて困っているようです、どうする?

「失礼」
 グラハムの奴は、おもむろに呟くと机を寄せてきた。
「え?」
「失礼と云った!」
 次の瞬間には、教科書をひったくられ奴と自分の机の間に置かれる。ちょっと待てなんだお前、普通一言くらい断りを入れるだろう!?
 ……非常識なまでに強引なその様に、どうしてクラスの連中は誰一人として振り返ろうとすらしないのか。それともなにか、こいつのこの強引さは日常茶飯事とでもいうのか!



3.体育祭です『グラハム』は何の競技に出ると思う?活躍する?

 あいつはスウェーデンリレーのアンカーと騎馬戦と借り物競争に出ることになった。
 俺は同じくスウェーデンリレーの第一走者と、騎馬戦の馬だ。どうして奴に足蹴にされなければならないのかと体育委員を小一時間問い詰めたいところだが、一応自分はまだクラスの新人である転校生だ。仕方ない、決められたことには従おう。
 ちなみリレーではスタートダッシュは俺が決めてやった。二番手と三番手がバトンパスをトチって順位は急転落したが、アンカーであるあいつは半周もの距離を無理矢理縮めてトップグループをごぼう抜きしやがった。
 クラスの連中は「流石グラハムスペシャル!」だとかなんとか叫んでいたが、……待て、それは奴の技名なのか?
 しかも借り物競争で『眼鏡』が出たというのはまあいいとして、どうしてビリーを抱えてゴールする必要がある!? いつもの強引さで眼鏡をひったくればいいだけだろう! どうしてビリー本人が必要になるんだそれも姫抱っこで走るその様に男どもの野太い(女子でいうなら黄色い)悲鳴が上がるのはなぜだ! やめろこの馬鹿一位だからって調子に乗って頬にキスとかするなビリーが穢れる!!



4.文化祭です『グラハム』は劇に出ることになりました、何の劇で何の役?

 なにが悲しくて男子校で『ロミオとジュリエット』を演じねばならないのか。まあジュリエットを演じるのがチビなあいつだというのはまあいいだろう。いい笑いものだ。俺も散々笑ってやったしな。
 ――しかし、だ。そこでどうして俺がロミオになるというのか。奴と息が合う? ふざけたことを云うなこの馬鹿クラス!!
 ああ嫌だ悪夢だありえない。散々渋ったくせに一度稽古が始まると途端に女になりきることのできるあいつの神経が信じられん。周りにいるクラスの連中が必死で笑いをこらえていることに気づかないのかこの男は。しかも、奴に見上げられ愛を囁かれたときに走る悪寒といったら!



5.文化祭、『グラハム』に一緒に回ろうと誘われました。どんなコースで回る?

 俺は断った。確かに断った。なのになぜ俺の隣にはこいつがいて、俺はこいつと模擬店やら出し物やらを見て回っているのだろう。
 こいつの強引さを容認している周囲には大概呆れるが、そんな環境のせいだろうか、こいつの我侭に巻き込まれることに慣れつつある自分も大概だ。
 奴は模擬店で揚げドーナツやらホットコーヒーやらチョコバナナやらを買い込んでいた。甘いものはそれほど好きではないはずではなかったか?と疑問に思ったが、その疑問はすぐに解消された。大量の甘いもの(俺も半分持たされた)を手にした奴が向かったのが、科学室だったからだ。科学室で行われている展示では、この時間ならばビリーが受付をしているはずだ。ものがものだから一般客どころか生徒さえも多くは立ち寄らない展示だというから、ビリーは今ごろ暇を持て余しているに違いない。  そろそろおやつの時間だからな、と笑う奴の言葉に、今回ばかりは同意してやることにした。



6.文化祭、あなたと『グラハム』のクラスは一体何の出し物をするの?

 だから演劇だと。しかも誰の策略なのか、舞台発表のトリを飾ることになってしまった。毎年、舞台発表は後半の方が集客率が高いという。一般客が一通り校内を巡って一休みがてら体育館で発表を見る割合が高いのと、後半に期待度の高いものを入れているらしいからとか。ああ、悪夢だ。俺はどうして無駄に手の込んだ煌びやかな衣装を着込まされて大人数が見る中で舞台の上で女装した(しかもそれが無駄に似合う)あいつに愛の言葉を囁かねばならないのか。
 しかもこの『ロミオとジュリエット』、ラストを改変しやがったのはどこのどいつだ! 自殺したジュリエットにロミオがキスをして生き返るとか、一体どこの白雪姫と混同しやがったこの馬鹿! ――ということを、最終稿とされる脚本を渡された際に叫びいざ暴れんとした俺の前に差し出されたのは、なんとビリーだった。あのビリーに目の前でへらりと笑われては怒る気力も萎える。というかクラスが違うだろうというツッコミは今さらだった。ビリーならばまあ仕方がない。……そう、思えたのに。

 なのにどうして俺はラストシーンだというのに舞台上で固まってしまっているのだろう。台詞が、台詞があったはずなのに思い出せない。棺の中のジュリエットにキス(のフリ)をして、ジュリエット扮するあいつが起き上がって互いに愛を囁いて幕が下りるはずだったのに。一応はクライマックスシーンだ。なんだかんだで俺の演技にも熱がこもり、俺のテンションも最高潮まで達していたというのに。
 どうして、キス(のフリ)をする直前にジュリエットが目覚めてしまうのだろう。キス(のフリ)をするまであと数センチというところで、どうしてジュリエットの腕が上がり顔が上がり俺の唇が奴の唇に当たっているのだろう。客席から盛大な歓声が聞こえる。呆然とした俺を残したまま、舞台の幕が下りる。
 奴は笑っていた。クラスの連中も大喜びで手を叩いていた。これで人気投票の一位は確実だな! と笑うクラスの連中を、俺は一人ずつ殴ってやった。一応は平手でやったあたりに俺の良心を感じて欲しい。……流石にビリーは殴れなかった。代わりに奴をグーで殴ろうとしたが避けられた。ちくしょうめ。

 文化祭でのクラス発表の人気投票、圧倒的な得票率でトップに輝いたのは俺たちのクラスだった。ありえない。



7.服装検査、『グラハム』は何かに引っかかったようです。一体どこが引っかかった?

 制服がやたらだぼついているから注意を受けたらしい。奴は成長期だからこれから伸びる、などとのたまったらしいが、俺にはそうは思えない。検査担当の教師もそう思ったらしく笑っていたが、口には出していなかった。賢明な判断だ。



8.修学旅行です。『グラハム』と同じグループになったあなた、どこに行ってどんなコースで回る?

 誰もそんな希望など出していないのに、どうして奴と一緒に回らねばならないのか。担任には「グラハムを頼む」などと云われるのはなぜだ。奴はあれでも学級委員だろう!?
 ……と、出発前までそう思っていた俺だったが、担任が心配していた理由が今ならばわかる。自由行動の時間になったとたん、奴はグループを抜け出しやがった。あまりに素早い、いっそ鮮やかなまでの行動力にグループの他の奴らは気づかなかったが俺は気づいた。先の担任の言葉もあって俺は思わず奴を追ったのだが、奴の向かった先はなんとビリーのいるところ、だった。
 他のクラスのグループに混じって――というか、行く先は同じなのにビリーだけをこちらに引き込んだ形で俺たちは自由時間を過ごしていた。クラスの連中の元に戻ったとき、同じグループのひとりにお疲れと肩を叩かれ俺は悟った。奴のこの行動は、担任もクラスメイトも予測済みだったのだ。予測はしていても止められないとわかっていたから、だから担任はそのあたりをよく理解していない俺に白羽の矢を立てたのだ! くそ、まんまと嵌められてしまった。……まあ、ビリーと同じ時間をすごせたのが不幸中の幸いというところだろうか。



9.修学旅行、『グラハム』の部屋に遊びに行ったあなた、『グラハム』は一体何をしていた?

 遊びに行くもなにも、奴と俺は同じ部屋だ。とてつもなく不本意だがな。
 シャワーを浴びて部屋に戻ると、なぜかビリーがいた。遊びにきてくれたのだろうか――と思ったのは一瞬のことだった。俺がシャワールームから出るなり、ビリーは奴に連れられて部屋を出て行ってしまった。しかも奴に腰を抱かれて。部屋を出る瞬間の、奴の誇らしげな顔が忘れられない。野郎、覚えてろよ……!



10.『グラハム』はクラスではどんな存在?どんな人と仲が良い?

 奴は学級委員だ。それ以上でもそれ以下でもない。多分。
 仲が良いのは……思えば、そういえるような人間はクラスにはいないな。なにかと仲が良いのは悔しいがビリーだと認めざるを得ないが、奴はクラスの誰とでもそれなりに仲良くという程度の付き合いしかしていないようだ。

 ……ああ、もうひとつ不本意なことを付け加えるなら、クラスメイトに同じ質問をしてみたら即答で「お前だろ?」と云われた。なにを馬鹿なことを。お前の目は節穴か!と云ってやったが、そいつはただ笑っていた。ああ、実に不可解で不愉快だ。



11.『グラハム』が先生に叱られていました、一体何をしたんだと思う?

 授業中、突然教室から飛び出した。しかも飛び出し方が尋常じゃない。窓枠を蹴って校舎のすぐ横にある木に飛び移って下に降りたのだ。そうして奴が向かった先は校庭で、そこにいたのはビリーのクラスの面々だった。ビリーは、クラスメイトから外れた場所でなぜか転んでいた。
 どうやらグラハムは、授業中に体育の授業ため校庭に出ているビリーをずっと見ており、穴だか石だかに躓いたビリーを見ていてもたってもいられずに教室を飛び出しらしい。
 事情はあとから聞いたわけだが、一部始終を見ていた俺からすれば馬鹿な男だとしかいいようがない。



12.『グラハム』と二人で下校しました、一体何の話をする?

 ……別に、なにも。俺は俺で自分の帰る方向に歩くだけだし、あいつはその間勝手に喋っているがたいした会話があるわけでもない。まあ、俺が転校してきた当初に比べたら会話らしい会話も多少はするようにはなってきたが、盛り上がるようなことはない。多分。



13.『グラハム』と二人で下校、寄り道をしようと誘われました、どこに行きますか?

 奴に連れて行かれたのはビリーの家だった。俺だってよく知っている、ビリーの家だ。そういえばこの街に戻ってきてから彼の家にやってきたのはまだ二度目だ。一度目は、引っ越してきてすぐに家族で挨拶に来た。あのときは玄関先でビリーの両親に挨拶をしただけで、ビリーには会えなかった。その後、ビリーとは学校で会えるからそれだけで満足していたような気がする。
 ああ、ビリーの家だ。昔はこのすぐ近くに俺の家もあって、互いの家を行き来するのがしょっちゅうだったからよく覚えている。俺のいた家はもう他人のものになってしまったけれど、ビリーの家は昔の面影そのままに残っている。懐かしい。とても懐かしく、嬉しいことだ。
 俺たちを出迎えてくれたビリーの母親は、俺がグラハムと一緒にやってきたことに驚いたようだった。この家によく足を運ぶらしいグラハムと、昔よくこの家に通っていたが今は寄り付かなくなった俺が並んでやってきたのだ、確かに驚くだろう。けれど彼女はあたたかく俺たちを迎えてくれて、俺は内心ほっとした。ビリーもまた、かつてと同じように俺を迎えてくれた。変わらない時間がそこにあった。グラハムがいるという大きな違いはあれど、そこにあるあたたかさは昔とひとかけの変わりもないものだった。



14.突然『グラハム』が転校する事に!! どんな理由で、どこに?何て言葉をかける?

 あいつが転校するという。クラスメイトの会話に耳を傾けてみると、どうやら俺と同じように親の転勤が原因らしい。けれど事実を告げたあいつは誰よりもあっさりとなんでもないことのようにそれを語っていた。悲しくはないのか。ひとりきりで、ここを離れて。このクラスを離れて。ビリーとさえも離れてしまうのに。
 けれどあいつは笑っていた。最後まで笑っていた。「私はまたすぐに戻ってくる」、そう云って笑っていた。俺はあいつの見送りのために、空港まで足を運んだ。もちろん個人的に別れを告げたかったわけじゃない。クラスの連中が俺に行けというから、不本意ながら代表として仕方なく、だ。当然のようにビリーも見送りに来ていたが、彼らは思っていたよりも――というか予想外にもあっさりと別れの言葉を交わしていた。笑顔さえ浮かべている。全く毎度のことだが、こいつらの関係というものがわからない。わからないが、まあ、ビリーが泣かないならそれでいいと思う。ビリーが笑っていられるのなら、俺はそれで充分だ。

 そうしてあいつは去っていった。意外なほど短い付き合いとなったが、その間にあったことといえば無駄に濃厚でとんでもないことばかりだったように思う。あの短さで、三年くらい軽く過ごしているとさえ思えてしまうのだから。



 そのときの俺は、まだ知らない。いや、どうして想像することができるだろうか。一年後の今ごろ、奴が本当に、言葉通りに戻ってくるなどということが。ようやくビリーと同じクラスになり平和な日々を送っていた俺の前に、あいつは平然とした顔で現れた。そうして事情を知っていたのか苦笑するだけのビリーに抱きついてキスをした。俺の目の前で、だ。そうしてひとしきりキスをして満足したのか、ビリーから顔を離して俺を見たグラハムは、得意気な顔で笑ってみせた。俺は奴を殴った。渾身の力で殴った。ビリーを抱き締めていたままの格好だったから殴るのは簡単だった。ビリーの腕の中で、奴は心底痛そうな顔をしていたがおもむろに笑い出した。身体に力が入らないのか、ビリーにかきついたままの、なりふり構わない大笑いだった。あんまりな姿に俺も笑った。ビリーも笑った。胸の奥にあったほろ苦いものは、見なかったふりをした。

 俺たちの騒がしい毎日が、また始まろうとしていた。














(15.お疲れ様でした。このバトンを10名に回してください。『』の指定も忘れずに!)

 人様のバトン回答を見て萌えたから書いたというだけの阿呆ネタですが、楽しかったのでページ作っちゃいました。グラビリ大好きですが、ジョシュアも大好きです! 思っていた以上にジョシュアを可愛がっていただけて嬉しかったです。無駄に長いですが、お付き合いいただきありがとうございました!